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第155話 内緒の呼び出し

Author: 霞花怜
last update Last Updated: 2025-09-18 19:00:13

「どうして止めずに行かせた?」

 栗花落が珍しく先輩のように更待に話しかけている。

 ちょっと怒っている感じだ。

「違うんです、祥太……。トイレに行くって、図書室を出ていって。帰ってこないなって思ってたら、メッセが来て。大和に会ってくるって」

 深津がスマホを見せてくれた。

 メッセを見た深津が慌てて更待に声を掛けたようだ。

「すみません。真野さん、特に変わった様子もなくて。トイレ行って戻りますって軽く言ってたから、そうだと思っちゃって」

 更待が懸命に栗花落に頭を下げている。

「どこで会うとか、詳しいことは書いてない?」

 晴翔の問いかけに深津が首を振った。

 深津が見せてくれたメッセは『大和に会ってくる』それだけだ。

 その後に深津が何を送っても返事はない。

「既読は付いてるから読んではいるね」

 晴翔は自分のスマホから真野にメッセを送った。

「邪魔しないから場所だけ教えて、って伝えました。あとは信じて待ちましょう」

 晴翔の言葉にも、栗花落と更待の顔は引き攣っている。

「理玖さんと冴鳥先生が秋風君に会っているタイミングで、積木君が接触してきた。その相手が俺じゃなくて真野君なのが気になります。状況を十分理解している真野君が、何も言わずに一人で行ったのにも、きっと意味がある」

 ただの呼び出しなら、真野は深津なり晴翔なり、相談したはずだ。

 すぐに晴翔のスマホが鳴った。

『体育倉庫。大和は俺と話したいらしい。俺も大和と話したいから、二人で話させて。聞いててもいいから』

 

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